シャープやフラットが増える順番は、多くの教材で「この順に覚えましょう」と示されます。でも、なぜその順番になるのかまで説明されることは、あまりありません。
ダイアトニックスケールとは、テトラコードと呼ばれる4音のかたまりを2つ持つ音階のことです。例えばメジャースケールは、その2つのかたまりが同じ形(全全半)でそろっているもの。このかたまりを入れ替えていくと、シャープ系7キー・フラット系7キー・合計15キーが順番に生まれます。♯と♭が増える順番にも、ちゃんと理由があります。テトラコードという考え方を軸に、その理由を見ていきます。
目次
ダイアトニックスケールとは「2つのテトラコードを持つ音階」
ダイアトニックスケールの「ダイア」はギリシャ語で数字の2、「トニック」は起点を意味します。2つの起点(テトラコード)を持つ音階、それがダイアトニックスケールです。メジャースケールもマイナースケールも、この仲間に含まれます。
耳なじみのある「ドレミファソラシド」は、Cメジャースケール(ハ長調)のこと。ダイアトニックスケールの一番シンプルな例です。
その前に:音名と階名は別物
仕組みに入る前に、ひとつだけ区別しておきたい言葉があります。音名と階名です。
- 音名(C, D, E, F, G, A, B)。鍵盤上で位置が決まっている、絶対的な音の高さの名前です。ピアノの中央の「ド」は、音名ではいつでもC。
- 階名(ド, レ, ミ, ファ, ソ, ラ, シ, ド)。スケールの中での並びの順番につけた名前です。同じ音でも、キーが変われば役割が変わります。
たとえばCメジャーではCが「ド」ですが、Gメジャーになると今度はGが「ド」になります。同じ間隔で並んでいれば、どの音から始めても階名では「ドレミファソラシド」。これを移動ドの考え方といいます。この感覚が、これから先のシャープ・フラットの話を理解する土台になります。
メジャースケールは「全全半・全全全半」の並び
メジャースケールには、ひとつだけ守られているルールがあります。隣り合う音の間隔が「全・全・半・全・全・全・半」の順に並ぶことです。
全音と半音の違いは、鍵盤を見るとはっきりします。間に黒鍵が1つ挟まる距離が全音、黒鍵が挟まらない隣同士の距離が半音です。Cメジャーで半音になるのは、ミとファの間、シとドの間の2か所だけ。ほかはすべて全音です。

この「全全半全全全半」という間隔のパターンが、メジャースケールをメジャースケールたらしめています。だから「ドレミファソラシド」という名前は、特定の音の高さではなく、この間隔のパターンに対してつけた呼び名だと考えると正確です。
仕組みの鍵はテトラコード
ここから、シャープ・フラットがなぜその順番で増えるのかを解いていきます。まずメジャースケールを前半4音と後半4音に分けてみます。
Cメジャーなら、前半はC・D・E・F、後半はG・A・B・C。この4音のかたまりをテトラコードと呼びます。そして前半も後半も、間隔はどちらも「全・全・半」。まったく同じ形をしています。

メジャースケールは、同じ形のテトラコードを2つ重ねたものだった。この見方ができると、次のキーがどう生まれるかが筋道立てて見えてきます。
15キーはこうして生まれる
新しいキーは、テトラコードを入れ替えることで作られます。まずシャープ系から見ていきます。
シャープ系:後半のかたまりを前半に回す
Cメジャーの後半テトラコード(G・A・B・C)を、次のスケールの前半としてそのまま先頭に置きます。そのうしろに、新しい後半となる4音(D・E・F・G)を足します。
ところが、このD・E・F・Gはそのままでは「全全半」になりません。EとFはもともと半音、FとGはもともと全音で、並びが逆だからです。そこでFを半音上げてF♯にします。するとEとF♯が全音、F♯とGが半音になり、D・E・F♯・Gが「全全半」にそろいます。これでGメジャースケールの完成です。

あとはこの手順を繰り返すだけです。Gメジャーの後半(D・E・F♯・G)をまた前半に回し、同じように新しい後半の音を1つ上げる。すると次はDメジャー(♯2つ)になります。1回繰り返すごとに、♯が1つずつ増えていきます。
増えていく♯には決まった順番があります。F・C・G・D・A・E・Bの順です。
| キー | ♯の数 | 新しく付く♯ |
|---|---|---|
| Gメジャー | 1 | F♯ |
| Dメジャー | 2 | C♯ |
| Aメジャー | 3 | G♯ |
| Eメジャー | 4 | D♯ |
| Bメジャー | 5 | A♯ |
| F♯メジャー | 6 | E♯ |
| C♯メジャー | 7 | B♯ |
フラット系:前半のかたまりを後半に回す
フラット系は、シャープ系のちょうど逆です。今度は前半テトラコード(C・D・E・F)を後半に回し、その前に新しい4音(F・G・A・B)を足します。
これも、そのままでは「全全半」になりません。AとBがもともと全音だからです。そこでBを半音下げてB♭にすると、AとB♭が半音になり、F・G・A・B♭が「全全半」にそろいます。これがFメジャースケール(♭1つ)です。
こちらも繰り返すたびに♭が1つずつ増えます。増える順番はB・E・A・D・G・C・F。シャープ系の順番をそのまま逆から読んだ並びです。
| キー | ♭の数 | 新しく付く♭ |
|---|---|---|
| Fメジャー | 1 | B♭ |
| B♭メジャー | 2 | E♭ |
| E♭メジャー | 3 | A♭ |
| A♭メジャー | 4 | D♭ |
| D♭メジャー | 5 | G♭ |
| G♭メジャー | 6 | C♭ |
| C♭メジャー | 7 | F♭ |
♯や♭が増えると現れる異名同音
♯を増やしていくと、途中でEの♯やBの♯が登場します。EのシャープはFの音、BのシャープはCの音と、鍵盤上では同じ場所です。黒鍵を挟まない音にも理屈の上では♯がつく、という場面が出てきます。フラット系でも同じで、CのフラットはBの音、FのフラットはEの音になります。これが、♯・♭が増えたキーで起きる少し特殊な扱いです。
合わせて15キー
整理すると、メジャースケールのキーは次の3つに分かれます。何もつかないCメジャーが1つ、シャープ系が7つ(G・D・A・E・B・F♯・C♯)、フラット系が7つ(F・B♭・E♭・A♭・D♭・G♭・C♭)。合わせて15キーです。
五度圏はテトラコードの言い換え
キーの全体像は、五度圏(サークル・オブ・フィフス)で一目で見渡せます。頂上にCを置き、右回りにシャープ系、左回りにフラット系が並びます。

面白いのは、この五度圏がここまで説明したテトラコードの入れ替えとぴったり一致することです。後半テトラコードを前半に回す操作(シャープ系)は、五度圏で右回りに5度上がる動き。前半を後半に回す操作(フラット系)は、左回りに進む動きにそのまま対応します。C→G→D→A、あるいはC→F→B♭→E♭という並びは、テトラコードを動かし続けた結果だったわけです。五度圏を丸暗記しなくても、仕組みから導けます。
⏵ 仕組みは分かった、次に何をすればいいか迷う方へ
ダイアトニックスケールの成り立ちが理解できても、それを実際の作曲でキー選びやコードの組み立てにどう使うかは、また別の段階です。JBG音楽院がまとめた51ページのロードマップPDFでは、DTM学習全体の地図と、独学でつまずきやすい順序を整理しています。
音と動きは動画で確認できる
テトラコードを動かす流れは、実際に鍵盤が動く映像で見るといっそうはっきりします。JBG音楽院のYouTube動画では、現役のプロ講師が15キーの成り立ちを鍵盤と図で順を追って解説しています。記事で読んだ手順を、動画の鍵盤と音でもう一度たどってみてください。
「なぜそうなるか」まで理解したい方へ
シャープやフラットが増える順番は、多くの教材で「この順に覚えましょう」と結論だけ示されます。でも、なぜその順番になるのかをテトラコードから説明している場面は、そう多くありません。JBG音楽院の授業では、こうした音楽理論を結論の暗記で終わらせず、理由までたどって理解できるように組み立てています。
ダイアトニックスケールの理解は、次の一歩につながります。同じ音の並びから7つのコードが生まれるダイアトニックコード、スケール全体の種類を見渡すスケールとは何かの基礎、そしてそれらを土台にしたコード進行の考え方。スケールが分かると、この先がぐっと見通しやすくなります。
まとめ
- ダイアトニックスケールとは、テトラコード(4音のかたまり)を2つ持つ音階。メジャースケールは、その2つが同じ形(全全半)になっているもの。
- メジャースケールは「全全半・全全全半」の間隔でできている。音名と階名を区別すると理解しやすい。
- テトラコードを入れ替えると、シャープ系7キーとフラット系7キーが生まれ、合計15キーになる。
- 五度圏は、そのテトラコードの入れ替えを円にまとめたもの。仕組みから導ける。
理屈が分かると、キー選びや転調が暗記ではなく判断でできるようになります。ダイアトニックスケールを理解した次の地図として、『社会人のDTM 始め方ロードマップ』(51ページPDF)も役立つはずです。
よくある質問
ダイアトニックスケールとは何ですか?
テトラコード(4音のかたまり)を2つ持つ音階のことです。「ダイア」はギリシャ語で2、「トニック」は起点を意味します。メジャースケールもマイナースケールもこの仲間で、メジャースケールはその2つのテトラコードが同じ形(全全半)になっているものです。
メジャースケールは全部で何キーありますか?
15キーです。何もつかないCメジャーが1つ、シャープ系が7つ(G・D・A・E・B・F♯・C♯)、フラット系が7つ(F・B♭・E♭・A♭・D♭・G♭・C♭)の合計です。
シャープやフラットが増える順番に決まりはありますか?
あります。シャープはF・C・G・D・A・E・Bの順、フラットはその逆でB・E・A・D・G・C・Fの順に増えます。テトラコードを入れ替える操作を繰り返すと、この順番で1つずつ増えていきます。