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DTM時代の「リズム感」強化法:クリック練習からグルーヴを生み出す身体的アプローチまで

2025.12.08

DTM時代の「リズム感」強化法:クリック練習からグルーヴを生み出す身体的アプローチまで

「DAWで正確に打ち込んでいるはずなのに、なぜか曲が平坦でカッコよくない」「プロの曲のような、思わず身体が動いてしまうような『ノリ』が出せない」

DTMで作曲をしていると、こうした「リズム」や「グルーヴ」の壁にぶつかることがよくあります。グリッド(拍の網目)にピッタリ合わせればリズムが良いというわけではないのが、音楽の奥深いところです。

実は、楽曲の良し悪しを決定づけるのは、メロディやコード進行以上に、この「リズム感」であると言っても過言ではありません。

この記事では、単調な打ち込みを脱却し、楽曲に生命感を吹き込むための「リズム感」の鍛え方を解説します。基礎的なクリック練習から、グルーヴを生み出すための身体的なアプローチまで、プロが実践しているトレーニング方法を具体的にお伝えします。

なぜDTMに「アナログなリズム感」が必要なのか?

コンピュータを使えば、1ミリ秒の狂いもなく正確なリズムを刻むことができます。しかし、皮肉なことに、人間は「完璧すぎるリズム」に対して「機械的」「冷たい」「飽きる」という印象を抱いてしまいます。

人が心地よいと感じる「グルーヴ」の正体は、演奏者の呼吸や身体の動きから生まれる「微細な揺らぎ」や「強弱(ダイナミクス)」です。

JBG音楽院では、「Desktop and Analog Music(DTAM)」という理念のもと、デジタルな制作環境であっても、生身の人間が持つ身体感覚を非常に重視しています。マウスでクリックする前に、まず自分自身の身体の中に「良いリズム」が流れていなければ、それをDAW上で再現することはできないのです。

基礎を固める!効果的な「クリック練習」のやり方

リズム感を良くする最短の方法は、地味ですが「メトロノーム(クリック)」を使った練習に尽きます。ただし、ただ漫然と合わせるだけでは効果がありません。

1. クリックを「点」ではなく「円」で捉える

リズム感が良くない人は、クリックが鳴る「点」のタイミングだけを気にしがちです。しかし、リズムとは点の連続ではなく、円運動のような「流れ」です。

クリックとクリックの間の空間(余白)をどう感じるかが重要です。「カッ、カッ、カッ、カッ」という点の連続ではなく、その間にある時間をたっぷりと感じながら身体を揺らしてみましょう。

2. 「裏拍」を感じるトレーニング

日本人は農耕民族的な「表拍(ワン・ツー・スリー・フォー)」のリズムには強いですが、洋楽的なグルーヴの肝となる「裏拍(ワン・エン・ツー・エン)」を感じるのが苦手な傾向にあります。

【実践練習】

  1. BPM80~100程度でクリックを鳴らします。
  2. クリック音が「裏拍(エン)」の位置で鳴っていると思い込んでリズムを取ります。
  3. 「(ウン)カッ(ウン)カッ」と、休符のタイミングに自分が入り、クリック音を裏拍として聴く練習を繰り返します。

これが自然にできるようになると、リズムの解像度が上がり、楽曲に「タメ」や「粘り」が生まれるようになります。

グルーヴを生み出すための「身体的アプローチ」

DTM作業はずっと座りっぱなしで行うことが多いですが、リズム感を鍛える時は、ぜひ椅子から立ち上がってください。

身体全体でリズムを刻む

ファンクやR&Bなど、グルーヴの強い音楽を聴きながら、足でステップを踏んだり、首を振ったりして、リズムを「体感」します。楽器が弾けなくても構いません。身体の中にビートを取り込むことが目的です。

「ボイスドラム」で歌う

口でドラムのフレーズを歌う「ボイスドラム」は、非常に効果的なリズムトレーニングです。

「ドン・タン・ド・ド・タン」と口に出して歌ってみてください。口でスムーズに言えないリズムは、DAWで打ち込むこともできません。逆に、口で歌って気持ち良いと感じるニュアンスは、そのまま打ち込みのヒントになります。

DTM打ち込みへの応用:脱・機械的なビート

身体的なリズム感が養われてきたら、それを実際のDTMワークに落とし込んでいきましょう。

1. ベロシティ(強弱)で表情をつける

人間がドラムを叩く時、すべての音が均一な強さになることはあり得ません。特にハイハットは、強く叩くところと弱く叩くところの差(抑揚)がグルーヴを生みます。

DAWのピアノロールで、ハイハットのベロシティをランダムに変えるのではなく、「強・弱・中・弱」のように意図的なパターンをつけてみてください。これだけでビートが生きてきます。

2. クオンタイズ率を調整する

入力したMIDIデータをグリッドに合わせる「クオンタイズ」機能ですが、常に100%の強度でかける必要はありません。

例えば、キック(バスドラム)はリズムの要なのでジャストタイミングに合わせつつ、スネアやハイハットはあえてクオンタイズをかけず、手弾きの「揺れ」を残す、あるいはクオンタイズ強度を50%~80%程度に留めるという手法もプロはよく使います。

JBG音楽院が推奨する「リズムの多角的学習」

リズム感の向上には、自分の好きなジャンルだけでなく、様々な音楽のリズムパターンを知ることも大切です。

ロックの8ビート、ジャズの4ビート(スウィング)、ファンクの16ビート、ラテン音楽の複雑なポリリズム。これらを体系的に学び、それぞれの「ノリ」の違いを理解することで、引き出しが増えていきます。

JBG音楽院のカリキュラムでは、講義形式でリズムの構造を理解するだけでなく、課題制作を通じて実際に打ち込み、講師からのフィードバックを受ける「反転学習サイクル」を採用しています。客観的に自分のリズムを評価してもらうことで、独学では気づけない「リズムの癖」や「ズレ」を修正していくことができます。

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まとめ:リズムは「理屈」と「身体」で攻略する

今回は、DTMにおけるリズム感の重要性と強化法について解説しました。

  • リズムは「点」ではなく「円(流れ)」で捉える。
  • クリックの「裏」を感じる練習がグルーヴへの近道。
  • 身体を動かし、口で歌うことでリズムを内在化させる。
  • 打ち込みではベロシティとタイミングの「揺らぎ」を意識する。

「リズム感がない」と悩む人の多くは、単に「正しい練習方法を知らない」だけです。今日から、制作前の5分間だけでもクリック練習を取り入れたり、好きな曲に合わせて身体を動かしてみたりしてください。その積み重ねが、必ずあなたの作るビートを劇的に変化させるはずです。

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リズム感は生まれつきの才能ではありません。
正しいトレーニングと理論で、誰でも「グルーヴ」を操れるようになります。


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