音楽は、一人で作るものじゃない。クライアントを「最高の味方」に変える、魔法の対話術
「念願のCM音楽コンペに採用された!でも、クライアントとのやり取りってどうすればいいんだろう…」「広告代理店からの修正指示が抽象的で、何を直せば良いのか分からない」「度重なる修正依頼に、心が折れそう…」そんな、仕事を受注したからこその新しい壁に悩んでいませんか?CM音楽制作は、クライアントの意向を正確に汲み取り、期待を超える作品を提供することが求められる「クリエイティブなチームワーク」です。作曲家としてのスキルはもちろんのこと、円滑なコミュニケーション能力こそが、プロジェクトの成功と、次の仕事に繋がる信頼を勝ち取るための鍵となります。この記事では、クライアントを「敵」ではなく「最高の味方」に変える、魔法のような対話術と、プロとしての修正対応術を具体的に解説します。
なぜ作曲家には「対話術」が問われるのか?
「良い音楽さえ作っていれば、それでいいはずだ」そう考える方もいるかもしれません。しかし、CM音楽制作は、自分の芸術性を追求するアーティスト活動とは異なり、クライアントの商品やサービスを世の中に広めるための「課題解決」という側面を強く持っています。クライアントにとって、あなたは音楽制作のプロであると同時に、プロジェクトを成功に導くための大切なビジネスパートナーなのです。
どんなに素晴らしい楽曲でも、クライアントの意図やCMの企画意図から外れていては、採用されることはありません。クライアントの抽象的なイメージを具体的な音楽に変換し、度重なる修正依頼にも的確に応え、プロジェクトを円滑に進める。その全てのプロセスにおいて、高度なコミュニケーション能力、すなわち「対話術」が不可欠となります。信頼される作曲家は、音楽的才能だけでなく、人としての信頼性も非常に高いのです。このようなCM音楽制作の全体像については、当音楽院のブログ記事である「CM音楽は、芸術ではない。「クライアントの要望」を15秒で形にする、職人技。」でも詳しく解説しています。
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初回打ち合わせ(オリエン)を制する!的確なヒアリング術
プロジェクトの成否は、最初の打ち合わせで半分決まると言っても過言ではありません。ここでクライアントの要望をどれだけ深く、正確に引き出せるかが、後の手戻りを減らし、スムーズな制作に繋がります。
「誰に、何を、どう伝えたいか」を深掘りする
クライアントが提示するオリエンシート(依頼書)に書かれている情報を鵜呑みにするだけでなく、その裏側にある「本当の目的」をヒアリングすることが重要です。以下の点を意識して質問してみましょう。
- ターゲット層:このCMは、どんな年齢・性別・ライフスタイルの人に見てもらいたいですか?
- コアメッセージ:このCMを通じて、視聴者に最も伝えたいことは何ですか?(例:「品質の高さ」「手軽さ」「楽しさ」など)
- ブランドイメージ:この商品や企業が持つ、あるいは目指しているブランドイメージはどのようなものですか?(例:「高級感」「親しみやすさ」「先進性」など)
抽象的な要望を「音楽言語」に翻訳する
クライアントは音楽の専門家ではないため、「キラキラした感じで」「エモい感じで」といった抽象的な言葉で要望を伝えることがよくあります。これを具体的な音楽に落とし込むのが作曲家の腕の見せ所です。「『キラキラ』というのは、例えばシンセベルのような高音域の楽器の音でしょうか?それとも、速いテンポのピアノアルペジオのようなイメージでしょうか?」といったように、具体的な音楽要素に分解して質問を重ね、イメージの解像度を上げていきましょう。
CM音楽の修正指示にプロとして対応する心構えとテクニック
クライアントワークにおいて、修正依頼はつきものです。時には理不尽に感じるような要求もあるかもしれません。しかし、それに対する対応の仕方で、あなたのプロフェッショナルとしての真価が問われます。
心構え:修正依頼は「否定」ではなく「共同作業」
まず最も大切な心構えは、修正依頼を「自分の音楽への否定」と捉えないことです。クライアントは、あなたを困らせようとしているわけではありません。彼らは、広告のプロとして、より商品が売れる、よりブランドイメージが向上するCMを作るために、あなたと「共同作業」をしているのです。この視点を持つだけで、修正依頼に対する精神的な負担は大きく軽減されます。
テクニック1:修正指示の「真意」を汲み取る
「ここのギター、もっと元気に弾けませんか?」という指示の裏には、「全体的にもっと明るい印象にしたい」という真意が隠れているかもしれません。表面的な言葉だけを捉えてギターの音量を上げるだけでなく、「承知いたしました。ちなみに、全体的にもっと明るい雰囲気がご希望でしたら、ピアノのコードを少しリズミカルにするアプローチも可能ですが、いかがでしょうか?」といったように、指示の真意を探り、複数の解決策を提案できると、クライアントからの信頼度は格段に上がります。
テクニック2:できないことは「代替案」と共に伝える
時には、技術的・音楽的に困難な要求や、納期的に不可能な修正依頼が来ることもあります。その場合は、ただ「できません」と断るのではなく、「その修正は〇〇という理由で難しいのですが、代わりに△△というアプローチはいかがでしょうか?こちらであれば、ご希望のイメージに近い形で、かつクオリティを担保できます」といったように、必ずプロとしての代替案をセットで提示することが重要です。
このような他者との共同作業は、J-POP制作の主流である「コライト」にも通じる考え方です。チームで作曲するメリットについては、当音楽院のブログ記事である「その曲、まだ一人で作ってる?作曲スキルを劇的に上げる「コライト」という選択肢」も参考にしてみてください。
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JBG音楽院で学ぶ、プロとしての「対話術」
JBG音楽院では、作曲やDTMといった音楽制作スキルだけでなく、このようなクライアントワークで求められるプロフェッショナルな「対話術」についても、日々の指導の中で学ぶことができます。私たちの教育の根幹にあるのは、単なる技術指導ではなく、自立した音楽クリエイターを育成することです。
JBG音楽院が重視する「反転学習サイクル」(講義→課題→講師フィードバック)は、まさにクライアントワークのシミュレーションです。講師(クライアント役)からの的確なフィードバックに対して、その意図を汲み取り、修正案を再提出する。このプロセスを繰り返すことで、自然とプロの現場で求められる対応力が身についていきます。
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まとめ:信頼されるパートナーとなり、継続的な仕事を掴もう
広告代理店や制作会社との円滑なコミュニケーションと、的確な修正対応術について解説してきました。CM音楽の仕事は、一度きりの制作で終わることは稀です。一つのプロジェクトで高い評価を得て、「この人となら、また一緒に仕事がしたい」と思ってもらえるような信頼関係を築くことが、継続的な仕事の依頼に繋がります。
クライアントは「敵」ではなく、最高の作品を作るための「味方」です。この記事で紹介した「魔法の対話術」を参考に、あなたもクライアントから信頼されるパートナーを目指してください。その姿勢が、あなたの作曲家としてのキャリアを、より豊かで確かなものにしてくれるでしょう。
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