
【楽曲分析編】プロの視点で名曲をアナライズ(楽曲分析)する具体的な手順と着眼点
「好きなアーティストの曲を何百回も聴いているのに、自分の作曲スキルがなかなか上達しない…」「名曲のどこが凄いのか、感覚的には分かるけど言葉で説明できない」「プロの作曲家は、一体どんな風に音楽を聴いて、自分の作品に活かしているんだろう?」そんな風に感じたことはありませんか?ただ音楽を「聴く」ことと、作曲スキル向上のために音楽を「分析(アナライズ)する」ことの間には、大きな違いがあります。コード進行の機能分析、メロディラインの構造と展開、楽曲全体の形式と構成、各楽器の役割とアレンジ、サウンドプロダクションの意図など、プロが名曲を分析する際の具体的な手順と着眼点を詳細に解説します。この記事を読めば、あなたもプロの視点を手に入れ、名曲から作曲テクニックを「盗む」ための具体的な方法が分かります。この分析力を高めることで、自身の作曲スキルを客観的に評価し、効果的に向上させる方法を提示します。JBG音楽院では、アナライズ能力の養成も重視しています。
なぜ「楽曲分析(アナライズ)」が作曲スキルを飛躍させるのか?
多くの作曲初心者は、たくさんの音楽を聴くことが重要だと考え、実践しています。それは間違いではありません。多様な音楽に触れることは、感性を磨き、引き出しを増やす上で不可欠です。しかし、プロを目指す上では、もう一歩踏み込んだ「聴き方」が求められます。それが「楽曲分析(アナライズ)」です。
楽曲分析とは、いわば名曲という完成された建築物の設計図を読み解く作業です。なぜこの建物は美しく、人々を魅了するのか。その構造、素材、デザインの意図を一つひとつ解き明かしていくことで、自分の建築(作曲)に応用できる普遍的な法則や、独創的なテクニックを発見することができます。ただ漠然と聴くだけでは「良い曲だな」で終わってしまうところを、「なぜ良いのか?」を論理的に理解することで、そのエッセンスを自分の武器として取り入れることができるのです。この音楽構造の理解こそが、作曲スキルを飛躍的に向上させる鍵となります。
楽曲分析の前に:準備するものと心構え
効果的な楽曲分析を行うためには、いくつかの準備と心構えが大切です。いきなり曲を聴き始める前に、まずは環境を整えましょう。
必要なツール:DAW、楽譜、そしてあなたの耳
現代の楽曲分析において、DAW(楽曲制作用ソフト)は非常に強力な味方です。分析したい楽曲をDAWに取り込むことで、特定の区間をループ再生したり、テンポを遅くしたり、イコライザーで特定の楽器の音を抜き出したりと、細部まで聴き込む作業が格段にやりやすくなります。また、可能であれば分析対象曲の楽譜(市販のバンドスコアやピアノ譜など)を用意しましょう。耳だけでは聴き取りにくいコードの構成音や、複雑なリズム、アレンジの細部などを視覚的に確認できます。そして何よりも大切なのが、集中して聴き取るための「耳」と、それを記録するためのメモ帳やテキストエディタです。
心構え:先入観を捨て、探偵のようにアプローチする
楽曲分析を行う際は、一度「好き」「嫌い」といった個人的な好みは脇に置き、探偵のように客観的かつ探究心を持ってアプローチすることが重要です。「この曲のヒットの秘密は何だ?」「作曲家はここで何を狙っているんだ?」といった問いを立て、その謎を解き明かすつもりで音楽の細部に耳を澄ませてみましょう。あらゆる要素に「なぜ?」と問いかける姿勢が、深い学びに繋がります。
プロが実践する楽曲分析の5ステップ・フレームワーク
では、具体的な楽曲分析のやり方を見ていきましょう。プロの作曲家やアレンジャーが行う分析は多岐にわたりますが、ここでは基本的な5つのステップからなるフレームワークをご紹介します。この手順に沿って分析を進めることで、網羅的かつ体系的に楽曲を理解することができます。
- 全体像の把握(楽曲形式と構成): まずは楽曲全体の設計図を確認します。イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ、間奏、アウトロといったセクションが、それぞれ何小節で、どのような順番で構成されているのかを書き出します。
- ハーモニーの分析(コード進行と機能): 次に、楽曲の骨格となるコード進行を分析します。各セクションのコード進行を耳コピや楽譜で確認し、キー(調)を特定した上で、各コードのディグリー(度数)や機能(トニック、ドミナントなど)を分析します。
- メロディの分析(スケール、動機、展開): 楽曲の顔であるメロディが、どのようなスケールやモードに基づいて作られているのか、どのような特徴的な動機(モチーフ)があり、それがどう展開していくのかを分析します。
- リズムとグルーヴの分析(ビート、パターン、楽器の役割): ドラム、ベース、ギター、ピアノなどが、それぞれどのようなリズムパターンを演奏しているか、それらがどう絡み合って楽曲のグルーヴを生み出しているのかを分析します。
- サウンドプロダクションの分析(アレンジ、音色、ミックス): 各楽器がどのように配置され(アレンジ)、どのような音色で、どのような音響空間(ミックス)の中に存在しているのかを分析します。
これらのステップを順に行うことで、一つの楽曲が持つ多層的な構造を深く理解することができます。
各ステップにおける具体的な着眼点:プロの音楽分析の視点
上記の5つのステップについて、プロはどのような点に注目して分析しているのでしょうか。さらに具体的な着眼点を解説します。
ハーモニー分析の着眼点:なぜこのコードが使われているのか?
コード進行をただ書き出すだけでなく、「なぜここでこのコードが使われているのか?」という意図を読み解くことが重要です。ダイアトニックコード以外のコード(ノンダイアトニックコード)が使われていれば、それは借用和音なのか、セカンダリードミナントなのか。テンションノートが効果的に使われていないか。ありきたりな進行を避けるためのリハーモナイゼーションの工夫は無いか。これらの応用的なコード理論の知識があると、分析の解像度が格段に上がります。これらのテクニックについては、当音楽院のブログ記事である「【コード理論編】プロが実践で使うテンションコードとリハーモナイゼーション基礎テクニック」でも詳しく学ぶことができます。

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メロディ分析の着眼点:心を掴む旋律の秘密
心を掴むメロディには、多くの場合、計算された工夫が隠されています。どのようなスケールやモードが使われているのか?短い動機(モチーフ)をどのように反復・変形させて展開しているのか?跳躍と順次進行のバランスはどうか?最高音や最重要音はどこに配置されているか?これらの点を注意深く分析することで、メロディ作りのヒントを数多く得ることができます。多様なスケールやモードの活用法については、当音楽院のブログ記事である「【スケール・モード編】多様な音楽ジャンルに対応するための実践的スケールとモード活用法」で詳しく解説しています。

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アレンジ・サウンド分析の着眼点:音のレイヤー構造を解き明かす
楽曲のアレンジやサウンドプロダクションにも、作曲家の意図が色濃く反映されています。各楽器がどのような役割を担っているのか(主旋律、対旋律、和音、リズムなど)?セクションごとに楽器の編成や音数がどのように変化し、楽曲の展開に貢献しているか?シンセサイザーの音色はどのように作られているか?リバーブやディレイといったエフェクトは、どのような目的で使われているか?これらのサウンド面を分析することで、楽曲全体の設計思想をより深く理解することができます。
JBG音楽院で学ぶ、実践的なアナライズ能力
JBG音楽院では、このような楽曲分析(アナライズ)の能力を、作曲における非常に重要なスキルと位置づけています。私たちのカリキュラムでは、単に音楽理論を知識として学ぶだけでなく、その理論を使って名曲を分析し、自分の作品に応用する訓練を繰り返し行います。
講師がプロの視点から楽曲をどのように分析しているかを具体的に示し、受講生自身も課題として楽曲分析レポートを作成します。それに対して講師がフィードバックを行うことで、分析の精度や着眼点を養っていきます。このプロセスを通じて、受講生は「良い曲」の構造を論理的に理解し、自身の作曲スキルを客観的に見つめ直す視点を手に入れることができます。音楽理論、DTM、楽器演奏、そしてアナライズを含む聴音能力。これらの作曲に必要な4大スキルを統合的に学ぶことが、プロへの最短距離であると私たちは考えています。
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まとめ:名曲研究を習慣化し、作曲家としての引き出しを増やそう
プロの視点で行う楽曲分析(アナライズ)の具体的な手順と着眼点について解説してきました。コード進行の機能分析、メロディラインの構造と展開、楽曲全体の形式と構成、各楽器の役割とアレンジ、サウンドプロダクションの意図など、多角的な視点から楽曲を深く読み解くことで、あなたは単なるリスナーから、作り手の意図を汲み取る学習者へと進化することができます。この分析力の向上こそが、自身の作曲スキルを客観的に評価し、効果的にレベルアップさせるための鍵となります。
作曲のための名曲研究は、偉大な先人たちから直接レッスンを受けるようなものです。JBG音楽院でも、このアナライズ能力の養成を非常に重視しています。今日から、あなたの好きな曲を一つ選び、この記事で紹介したステップに沿って分析を始めてみてはいかがでしょうか。最初は難しく感じるかもしれませんが、続けていくうちに、音楽がこれまでとは全く違って聴こえてくるはずです。その発見の一つひとつが、あなたの作曲家としての貴重な財産となるでしょう。
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