
アレンジ入門!コード進行と簡単ハーモニー
「メロディは思いつくけれど、伴奏がスカスカ」「コードを並べただけで厚みが出ない」——そんな悩みは dtm 初心者 の方の定番です。難解な音楽理論をすべて覚えなくても、よく使われるコード進行とシンプルなハーモニーを押さえれば、曲の印象はぐっと豊かになります。本稿では “覚えやすさ” を重視しながら、定番進行・手軽なボイシング(音の重ね方)・簡単なコード変化テク・曲全体のバランス調整までを丁寧にガイドします。
1. まずは「3コード」を味方にする
1-1. I(トニック)-IV(サブドミナント)-V(ドミナント)とは?
キー(調)をひとつ決めると、スケール内に7種類の主要コードが登場します。その中でもI・IV・Vは “役割の三本柱” と呼ばれ、ほとんどのポップスで土台になっています。
- I:トニック … 家に帰ったような落ち着きを与えるコード。
- IV:サブドミナント … 少し外に出て移り変わる空気を感じさせるコード。
- V:ドミナント … 家に戻る一歩手前の期待と緊張を作るコード。
キー C なら C(トニック)→F(サブドミナント)→G(ドミナント)→C と戻るだけで完結感のある4小節が完成します。
1-2. 8小節モデルで感覚をつかむ
| C | F | G | C | | Am | F | G | C |
5小節目を平行調(同じキーの中で6番目に当たるマイナーコード Am)に変えると、さりげなく切なさが立ちのぼります。ここでは「T=安定」「S=少し不安」「D=緊張」という役割イメージだけ覚えれば十分です。
2. シンプルなボイシングで厚みを出す
2-1. ルート+コードトーンだけでOK
ボイシングとは和音の重ね方。難しく考えず「低い音域にベース(ルート)」「中音域にコードトーン(1・3・5度)」を置けば、初日から実践できます。
- 左手(またはベーストラック):ルート音を1オクターブ下で鳴らし土台を支える。
- 右手(またはパッド/ピアノ):コードトーンを2〜3音で鳴らす。
「Cメジャーキーの F(サブドミナント)」なら左手 F1、右手 A-C-F、これだけで音域が分担され低域が濁りにくくなります。
2-2. オンコードで動きをプラス
「コードネーム/ベース音」の形で書かれるオンコード(分数コード)は、ベースラインをなめらかにしつつコード自体は増やさない便利ワザです。
C | C/B | Am | Am/G
ベース音が半音ずつ下がるため、聴き手の耳は“滑らかな下降”として認識します。実際のコード種類は3つしかないので覚える負担も変わりません。
2-3. 9th を一粒だけ振りかける
数字の9が付くコードは「コードの外側にある高い音(スケール9度目)を1音足した形」。I-IV-V の上に9thをトッピングすると一気に洗練された印象になります。
Cadd9 (C-E-G-D) | Fadd9 (F-A-C-G) | Gadd9 (G-B-D-A)
キラッとした響きはアコースティックギターのアルペジオなどと相性抜群。押さえる指は1本増えるだけです。
3. 初心者でも扱えるコード変化テク
3-1. サブドミナントマイナーで「切なさスイッチ」
トニック C の前に Fm(IVm)を入れると、メジャー曲でも一瞬だけ夕暮れめいた切なさを演出できます。
C | Fm | C | G
しくみは単純で「同じルートを共有している兄弟コード」と覚えればOK。使いすぎると湿度が上がるので1曲に1〜2回が目安です。
3-2. クリシェでコードを“歩かせる”
クリシェとはベースかメロディが半音階で動く処理。先ほどのオンコードと相性が良く、短期間で覚えやすい変化手段です。
C | C/B | C/B♭ | Am
C の響きを保ったままベースが C→B→B♭ と階段を下るだけで、映画のような進行感が得られます。
3-3. 代理コードでキャラクターを差し替える
同じスケール内で機能が近いコードを置き換えると、新鮮さを損なわずキャラクターを変えられます。たとえばトニック C を Em(IIIm)へ差し替えると柔らかい表情に。
元の進行 | C | Am | F | G |
---|---|
代理テイク | Em | Am | F | G |
4. 曲全体のバランスを考えるアレンジ術
4-1. セクションごとに「役割」を振り分ける
- イントロ … 主役のメロディは控えめ、コードをすっきり配置。
- Aメロ … ボーカル中心。ハーモニーは3音以下でスペース確保。
- Bメロ … コードを一段上げる(転回形)か代理コードで色を変える。
- サビ … 9th やオンコードで音域と厚みを最大化。
4-2. EQ とパニングで「住み分け」を意識
コードを厚くしても EQ で200 Hz 以下をカットするとベースと衝突しにくくなり、パッド系は左右に軽く広げればボーカル帯域と重なりません。音数より“空いている帯域を埋める”発想が肝心です。
4-3. リズム隊とハーモニーの“掛け算”
キックのパターンを変えずコードだけ差し替えると、粗削りでもグルーヴと調性感が両立します。逆にコード進行が単調なら、シンコペーション(裏拍で鳴るリズム)を加えるだけで動きが出ます。
5. よくある質問 Q&A
Q1. コード進行がワンパターンに感じます…
A. クリシェやサブドミナントマイナーを1か所だけ差し込むと、聴き慣れた進行にもドラマが生まれます。全小節を凝るより“ここぞ”で使う方が効果的です。
Q2. ボイシングが濁ってしまいます…
A. 低音域(150 Hz 以下)に3度の音を置くとモヤつきやすいので、3度は1オクターブ上、もしくは省略するとクリアになります。
Q3. ハーモニーを足したのに逆に薄く聴こえます…
A. 中域(300 Hz–1 kHz)に音が集中すると「団子」になりがち。EQ で同帯域を引き合うか、1〜2音をオクターブ上へ跳ね上げて空間を確保しましょう。
まとめ
- まずは I-IV-V の3コードで安定・不安・緊張を作り分けよう。
- オンコードや 9th を1音足すだけで厚みと動きが手に入る。
- サブドミナントマイナー・クリシェ・代理コードは変化球として覚える。
- ボイシングは低域にルート、中域にコードトーン。EQ で帯域を住み分ける。
- 曲全体はセクションごとの役割とリズム×ハーモニーの掛け算でバランス良く。
気に入ったテクニックを1つ選び、今ある8小節のループへ試しに差し込んでみてください。わずかな変化でも“聴こえ方”が大きく変わることを体験できるはずです。
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