
「どこかで聴いたことがあるのに、新鮮——」。そんな不思議な心地よさをもたらすカノン進行は、クラシックの名曲「パッヘルベルのカノン」をルーツに、今やJ-POPのヒットソングにも数多く採用されています。今回は、コードネームは分かるけれど音楽理論はこれから深めたいという方に向けて、カノン進行の基本から実際の楽曲例、作曲への活かし方までを体系的にまとめました。
カノン進行とは?──クラシック発、ポップス定番のコードシークエンス
1. ベースになるコードパターン
カノン進行の基本形は8小節で完結するI → V → vi → iii → IV → I → IV → V(キーCでは C→G→Am→Em→F→C→F→G)。循環構造のおかげで、最後のVが再びIに戻るとき美しい解決感が生まれ、永遠にループしても飽きにくいのが特徴です。
2. “耳に残る”3つの理由
- 順次進行のベースライン:ルート音がC→G→A→E→F…とほぼ小さな跳躍で下行し、自然に耳に入る。
- テンションとリリース:vi(マイナー)やiiiが一瞬の切なさを与え、直後のIV・Iで安堵感を生む。
- 歌メロの自由度:コードごとのキャラクター差が大きすぎないため、メロディを伸び伸び動かせる。
カノン進行 使用曲──J-POPの実例と効果
「カノン進行 使用曲」で検索すると膨大なリストが挙がりますが、ここでは代表的な5曲をピックアップし、どのセクションで用いられているか、そして聴き手にどんな心理的効果をもたらしているかを整理してみましょう。
1. 「キセキ」 / GReeeeN
サビ全体が王道のカノン進行。明日、今日よりも好きになれる…のフレーズがIコード(G)に乗り、V→viと進むにつれ想いが高まり、IV→Iで安心感を与えつつ、最後のVで再び期待を煽る——まさに〈告白〉がテーマの歌詞を音で後押ししています。
2. 「チェリー」 / スピッツ
Aメロ後半〜サビ頭にかけてカノン進行が配置されています。愛してるの響きだけで…と転調感なくスッと心に届くのは、カノン進行の“引力”によるところが大きいでしょう。
3. 「恋音と雨空」 / AAA
Bメロでvi→iii→IV→Iの切ない流れを強調し、サビで安心感を取り戻すアレンジ。雨の情景と恋心の揺らぎをコードで描写しています。
4. 「奏(かなで)」 / スキマスイッチ
ピアノ主体のアレンジでI→V→vi→iii…が際立ち、卒業・旅立ちというテーマの“ほろ苦さ”と“未来への希望”を同時に表現。曲終盤で半音転調しても同型を保つことで、感情の“持続”を担保しています。
5. 「前前前世」 / RADWIMPS
サビの裏コード進行を追うと実は変形カノン。強いビートの下にクラシカルな構造が隠れているため、ロックテイストでもポップな聴きやすさが残ります。
作曲に活かす5つのヒント
- ダイアトニック内で完結させる:まずは転調やテンションを足さず、基本形の美しさを体感する。
- ベースを8分音符で刻む:カノン進行本来の滑らかさが際立つ。
- メロディはスケール外跳躍を加える:コードが安定している分、メロで敢えて大胆な跳躍を入れても破綻しにくい。
- ハーフタイム・ダブルタイムで表情を変える:同じ進行でもテンポ感をずらすと印象が一変。
- マイナーキーに転写する:短調版カノン(Am→Em→F→C…)は哀愁がいっそう際立つ。
映像で学ぼう
JBG音楽院の講師である野口先生より、「カノン進行」について詳しく解説頂きました。
こちらも是非御覧ください。
まとめ──カノン進行の“汎用力”を味方に
カノン進行は、シンプルで覚えやすい構造ながら感情を豊かに動かす力を秘めています。名曲たちが証明する通り、この進行を知ることはヒット曲のDNAを理解することと同義。ぜひご自身の楽曲でも試し、リスナーの心に長く残るメロディを紡いでみてください。
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