【MIDI打ち込み上達の秘訣】ベロシティとタイミング調整で機械っぽさを消し、人間味を加えるプロの技
DTMで楽曲制作を進める中で、「メロディもコードも合っているのに、なぜか安っぽく聞こえる」「どうしても機械的な『打ち込み感』が拭えない」といった悩みを抱えていませんか?プロの楽曲と自分の楽曲を聴き比べたとき、その決定的な差は音色そのものよりも、実は「演奏のニュアンス」にあることが多いものです。
この記事では、MIDIデータの「ベロシティ(音の強弱)」と「タイミング(発音位置)」、そして「音の長さ(デュレーション)」を調整することで、楽曲に人間味あふれるグルーヴと生命感を吹き込むプロのテクニックを解説します。DAWの機能を活用しつつ、楽器本来の特性を理解したエディットを行うことで、あなたの作品は見違えるほど表現豊かになります。
なぜあなたの打ち込みは「機械的」に聞こえるのか?
具体的なテクニックに入る前に、まずは「機械的に聞こえてしまう原因」を明確にしておきましょう。DAWソフトは非常に優秀ですが、デフォルトの状態では「完璧に整列された」データを生成する傾向があります。
1. すべての音がグリッドに吸着している(ジャストなタイミング)
マウスでポチポチと入力した場合や、クオンタイズ(タイミング補正)を100%の強さでかけた場合、すべての音符が小節線や拍の頭にピッタリと揃います。しかし、人間が楽器を演奏するとき、すべての音が完全にジャストなタイミングで発音されることはまずありません。この「完璧すぎるタイミング」こそが、ロボットのような冷たい印象を与える最大の要因です。
2. ベロシティが均一になっている
多くのDAWでは、マウス入力時のデフォルトベロシティが「100」や「127(最大値)」などに固定されています。抑揚のない一定の音量で演奏され続けるピアノやドラムは、聴き手に「不自然さ」を感じさせます。実際の演奏では、同じ強さで叩こうと意識しても、物理的な揺らぎや感情による強弱が必ず生まれます。
【極意1】ベロシティ調整で「抑揚」と「躍動感」を生む
ベロシティ(Velocity)は単なる「音量」ではなく、楽器の「音色(トーン)」の変化にも大きく関わります。例えばピアノやドラムの音源は、ベロシティが低いと柔らかい音に、高いと硬くアタックの強い音になるようにサンプリングされていることがほとんどです。
拍の強弱を意識する(強拍と弱拍)
音楽には「強拍」と「弱拍」があります。4/4拍子のポップスやロックであれば、一般的に1拍目と3拍目に重心があります(ドラムのキックやスネアの位置によって感じ方は変わりますが、基本的なパルスとして捉えてください)。
- 表拍(1・3拍目):少し強めに設定(例:100〜110)
- 裏拍(2・4拍目):少し弱めに設定(例:80〜90)
- 16分音符の裏:さらに弱める(例:60〜70)
このように、リズムの構造に合わせてベロシティに差をつけるだけで、平坦だったフレーズに「ノリ」が生まれます。特にハイハットやバッキングギターの打ち込みでは、この強弱の波(うねり)を作ることがグルーヴの鍵となります。
ゴーストノートの活用
ドラムのスネアや、ベースの演奏において、実音としてはほとんど聞こえないような極めて小さな音(ベロシティ20〜40程度)を混ぜる手法を「ゴーストノート」と呼びます。
聞こえるか聞こえないかギリギリの音が隙間に入ることで、リズムの隙間が埋まり、人間が叩いているような「生々しい空気感」が演出されます。これもベロシティ調整の重要なテクニックの一つです。
【極意2】タイミング調整で「人間味(グルーヴ)」を作る
次に重要なのが、発音タイミングの調整です。「グリッドからあえてズラす」ことで、楽曲に心地よい揺らぎを与えます。
クオンタイズは「かけすぎない」のが鉄則
リアルタイム入力(鍵盤などを弾いて録音)をした後、クオンタイズをかける際は、強度(Strength)を100%にせず、60%〜80%程度に留めるのがおすすめです。
これにより、自分の手癖や演奏の「味」を適度に残しつつ、リズムの崩れを補正することができます。完全に揃えてしまうよりも、はるかに音楽的な仕上がりになります。
「前ノリ」と「後ノリ」を使い分ける
ジャンルや楽器の役割によって、意図的にタイミングをズラす手法も効果的です。
- ラッシュ(前ノリ・走り気味):疾走感を出したいとき、グリッドよりほんの少しだけ前に置く。ロックのギターや、勢いのあるハイハットなど。
- レイドバック(後ノリ・もたり気味):どっしりとした安定感や、R&Bのような粘りを出したいとき、グリッドより少し後ろに置く。スネアやベースによく使われます。
ただし、やりすぎると単に「リズムが合っていない」と聞こえてしまうため、数ティック(Tick)単位での微調整が必要です。耳で聴いて「気持ちいい」と感じるポイントを探りましょう。
【極意3】ノートの長さ(デュレーション)で「歌わせる」
「いつ音が出て、いつ音が消えるか」。打ち込みにおいて、音の「切り際(ノートオフ)」のタイミングは、発音のタイミングと同じくらい重要です。
スタッカートとレガートの対比
管楽器や弦楽器、そして歌のメロディを打ち込む際、すべての音符が隙間なく埋まっていると、息継ぎのない苦しい演奏に聞こえます。逆に、すべてが短すぎるとブツブツと途切れた印象になります。
- スタッカート(短く切る):歯切れよさを表現。ベースのルート弾きなどでも、休符をしっかり作ることでリズムが締まります。
- レガート(滑らかにつなぐ):隣り合うノートを少し重ねる(オーバーラップさせる)ことで、滑らかなスラーを表現できます。特にストリングス音源などでは、この重なり具合がリアリティを大きく左右します。
JBG音楽院が提唱する「DTAM」の視点
ここまで紹介した「ベロシティ」「タイミング」「音の長さ」の調整は、実は「実際の楽器はどう演奏されているか」を知っていると、迷いなく調整できるようになります。
JBG音楽院では、DTAM(Desktop and Analog Music)という理念のもと、パソコン上での編集技術(Desktop)だけでなく、実際に楽器を演奏するフィジカルな感覚(Analog)も重視しています。
例えば、「ドラマーはここでスティックを振りかぶるから、次の音は少し遅れるはずだ」とか、「ギタリストは弦を離す時にノイズが出る」といった、実際の演奏体験に基づく知識があるだけで、MIDI編集の解像度は飛躍的に向上します。
ヒューマナイズ機能と手動エディットの使い分け
多くのDAWには「ヒューマナイズ」という機能が搭載されています。これは、ベロシティやタイミングをランダムにばらつかせる便利な機能です。
しかし、プロのクオリティを目指すのであれば、「ヒューマナイズ機能はあくまで下地作り」と考えましょう。
ランダムなズレは、時として音楽的なグルーヴを破壊してしまうこともあります。まずはヒューマナイズ機能で全体を少し馴染ませてから、ここぞというキメのフレーズや、メロディの重要な箇所は、必ず自分の耳と手を使って、一つ一つ丁寧にエディットすることをおすすめします。
この「手作業」の手間を惜しまないことこそが、リスナーの心を動かす「魂の入ったデータ」を作る最大の秘訣です。
プロレベルの制作環境で、確かな技術を身につける
独学でのDTMは、どうしても「正解がわからないまま、なんとなくツマミを弄る」という時間の浪費に陥りがちです。特に、今回解説したような「心地よいズレ」や「音楽的な強弱」の感覚は、経験豊富なプロからのフィードバックを受けることで、最短距離で習得することができます。
JBG音楽院では、音楽理論の基礎から、各楽器の特性、そしてDAWを用いた高度な編集技術までを体系的に学べるカリキュラムを用意しています。「なんとなく」の感覚ではなく、理論と実践に裏打ちされた「確かなスキル」を身につけたい方は、ぜひカリキュラムをチェックしてみてください。
まとめ:細部に宿る「人間味」が楽曲のクオリティを決める
今回は、MIDI打ち込みに人間味を加えるための、ベロシティとタイミング調整のテクニックについて解説しました。
- ベロシティ:単なる音量ではなく、リズムの強弱や音色の変化として捉える。
- タイミング:ジャストなグリッドから意図的にズラすことで、グルーヴを生み出す。
- デュレーション:音の切り際を意識し、スタッカートやレガートで表情をつける。
- 実演奏のイメージ:アナログ楽器の奏法を理解することが、リアルな打ち込みへの近道。
現代のDAW音源は非常に高音質ですが、それを活かすも殺すも、プログラミング(打ち込み)の技術次第です。最初は手間がかかると感じるかもしれませんが、細部へのこだわりは必ず音に表れ、聴き手に伝わります。
ぜひ今日からの楽曲制作で、一つ一つの音符に「命」を吹き込むような意識でエディットを行ってみてください。あなたの楽曲が、より魅力的で感動的なものになるはずです。
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