趣味で作ったDTMの曲を、少しでも収入につなげられないか。DAWや機材にそれなりに投資してきたぶん、そう考える方は少なくありません。
作曲の副業は、「自分が作りたい曲」から「誰かの用途に役立つ曲」へ視点を移すところから始まります。代表的な始め方はストック販売・受注制作・直接依頼の3つ。最初は数百円から始まり、楽曲の蓄積とクライアントの信頼が増えるにつれて収入も伸びていきます。ただし、サブスクやコンペの単価が実際どのくらいなのかを知ったうえで、続けられる形に設計しておくことが大切です。この記事では、3つの始め方と、稼げるまでの現実的な道のりを整理します。
目次
作曲の副業は「誰の、どんな用途の曲か」から始まる
作曲でお金が動くのは、誰かのコンテンツの価値を高めたときです。自分の作りたい曲を作っているだけでは、なかなか仕事にはつながりません。最初の一歩は、聴き手ではなく「使い手」を想像することにあります。
たとえば、YouTubeのオープニングで視聴者のテンションを上げたい。配信の待機画面に寂しさを埋めるBGMが欲しい。個人制作のゲームに世界観に合う主題歌が欲しい。こうした具体的な用途に応える曲が、収益化の入り口になります。趣味で磨いてきた力を、誰かの課題を解く方向に向け直すイメージです。
趣味の作曲と副業の作曲で一番違うのは、ここです。趣味は自分が気持ちよくなる音を追いますが、副業は相手が達成したいこと、たとえば視聴維持・世界観・ブランドの印象から逆算します。同じDAWスキルでも、向ける方向が変わる。この切り替えができると、作り始める前の段階で勝負がほぼ決まります。
副業で作曲を始める3つの方法
具体的には、ストックミュージック型・クラウドソーシング型・直接依頼型の3つが代表的な入り口です。報酬の入り方も、求められる力も異なります。まず全体像を表で見比べてみます。
| 始め方 | 報酬の入り方 | 主に求められる力 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| ストックミュージック型 | 登録曲が売れるたびに収益(資産型) | 用途が明確な汎用性の高い曲 | 自分のペースで数を作りたい人 |
| クラウドソーシング型 | 1案件ごとの制作報酬 | 要望を汲むヒアリング力・納期管理 | やり取りしながら実績を積みたい人 |
| 直接依頼型(SNS) | 仲介手数料なしで報酬がそのまま | 発信力・個人間の信頼構築 | 自分で顧客を開拓したい人 |
1. ストックミュージック型(Audiostockなど)
あらかじめ作った曲をAudiostockのようなサイトに登録し、購入されるたびに収益が入る方法です。納期もクライアントとのやり取りもなく、一度登録した曲はその後も売れ続ける資産になります。副業として一番始めやすい入り口です。
ただし、登録すれば自動的に売れるわけではありません。すでに膨大な数の曲が並んでいて、ほとんどは埋もれます。ここで効くのが、用途のはっきりした使い勝手です。「結婚式のオープニング向けの感動系」「企業説明動画の明るいパート向け」のように、使う側が検索する場面を先回りした曲ほど選ばれます。聴かせる曲ではなく、使ってもらう曲を作る発想です。最初の数ヶ月は、売上より点数を積んで当たりの傾向をつかむ期間と考えると気が楽になります。
2. クラウドソーシング型(ココナラなど)
「こういう雰囲気のBGMを作ってほしい」という個別の依頼を受けて制作する方法です。ストック型より1曲あたりの単価が高く、評価が積み上がれば指名で依頼が来るようになります。
この入り口の勝負は、技術よりも要望のすり合わせにあります。文章だけで届く依頼は、イメージを取り違える危険が大きい。プロの現場でも、「おどろおどろしい感じで」とだけ言われて作ったものが相手の頭の中の絵と食い違う、ということが起こります。作って一発で通ることはむしろ稀で、認識合わせと修正のやり取りが前提です。だから最初に、用途・参考曲・使う場面・避けたい方向まで具体的に確認できる人がリピートを取ります。納期を守ることも、ここでは技術と同じ重さを持ちます。
3. 直接依頼型(SNSなど)
Xなどで「有償で依頼を受け付けます」と自ら発信し、配信者の待機画面BGMや個人制作ゲームの主題歌を直接受注する方法です。仲介手数料が引かれないぶん、報酬がそのまま手元に残ります。
そのかわり、仕事を取ってくる部分を全部自分で担います。誰に向けて何を作れる人なのかが伝わる発信と、個人間のやり取りを安心して任せてもらえる信頼。この2つがそろわないと、手数料ゼロの利点まで届きません。配信文化の広がりで需要が伸びている領域です。
⏵ ここから何を始めればいいか迷っている方へ
3つの始め方は分かっても、自分はどの順序で進めるべきか、どこまでスキルを上げれば仕事になるかは別の悩みです。JBG音楽院がまとめた51ページのロードマップPDFでは、DTM学習全体の地図と、独学でつまずきやすい順序を整理しています。
副業作曲で「いくら稼げるのか」の現実
目安として、最初の1円までに数ヶ月から半年ほどの準備期間がかかるのが一般的です。最初は数百円の売り上げから始まり、楽曲のストックと信頼が積み上がるにつれて伸びていきます。ここで現実的な数字を知っておくと、焦らずに続けやすくなります。
たとえばサブスク配信の収益は、1再生あたりの単価で決まります。JASRACの資料(2024年6月時点)によると、有料プランでおおよそ次のような水準です。
| サービス | 1再生あたりの目安 |
|---|---|
| Apple Music | 約0.29円 |
| Amazon Music Unlimited | 約0.30円 |
| YouTube Music | 約0.20円 |
| Spotify(有料) | 約0.18円 |
仮にSpotifyの有料再生で月10万回なら、約1万8千円。配信だけで生活費をまかなうには数百万回規模が必要で、ほとんどの作家が副業や別の収益源と組み合わせています(JASRAC/ITUAJの報告)。アーティストへの楽曲提供も、印税型では報酬がその曲の売れ行き次第になり、頑張って作っても収入につながらない場合があります。
もう一つの代表的な道がコンペです。作家事務所を通じてアイドルやアニソンなどの楽曲に応募する仕組みで、採用されれば1曲あたり数十万円規模になることもあります。ただし採用率はおおむね1〜5%と狭き門で、外れても収入にはなりません。夢のある仕事ですが、当たれば大きい一方で安定はしにくい、という構造を持っています。
収入面でもう一つ正直に伝えておきたいのは、フリーの音楽収入は景気の影響を直接受けるという点です。発注元の会社の業績やイベントの開催状況が、そのまま仕事量に響きます。だからこそ、ストック・受注・配信・コンペといった複数の入り口を持っておくことが、副業を続けるうえでの保険になります。収益化のもう一つの道として、作曲・DTM講師という収益の道を組み合わせる人もいます。
単価を上げて「指名される作曲家」になる条件
最初は数千円の報酬でも、実績を重ねると数万円、やがて数十万円の案件に手が届くようになります。単価を上げる鍵は、技術そのものと同じくらい、リピートと紹介を生む信頼にあります。
作曲の仕事は、つながりで広がっていく面があります。ある現役の作曲家は、最初の案件をDTM環境の構築を手伝ってくれた知人から受けたといいます。一度信頼されると、その人がまた別の人を紹介してくれる。指名で依頼が来る作曲家ほど、この連鎖を丁寧に育てています。納期を守り、要望に応え続けることが、結局は次の仕事を呼びます。
技術面では、どんなジャンルにも一定のクオリティで応えられる応用力と、ノイズのないクリアな音源を納品するミックス技術が単価を左右します。「なんとなく良い曲が作れる」段階から、「狙った印象を理論で再現できる」段階へ進めるかどうかが分かれ目です。あわせて、仕事につなげるポートフォリオの作り方を整えておくと、初対面の相手にも実力が伝わりやすくなります。
見落とされがちですが、社会人として培ったビジネスの力は、副業作曲では大きな武器になります。やり取りの段取り、納期の管理、価格の交渉。個人の作曲家が大手と直接契約し、契約書や価格交渉まで自分で進める場面もあります。音楽スキルとビジネス感覚を一人で兼ね備えられると、それだけで強い立ち位置に立てます。
独学で副業を続けるときにぶつかる壁
副業として活動を始めると、多くの人が同じ壁にぶつかります。手癖ばかりで似たような曲しか作れない。クライアントの要望に思うように応えられない。感覚やセンスだけに頼った独学では、安定して打ち返すための引き出しが足りなくなってくるからです。
この壁は、体系的な理論と、第三者からのフィードバックで抜けやすくなります。なぜその響きになるのかを言葉で説明できると、要望を聞いてから音にするまでの距離が縮まります。逆にここが曖昧なままだと、毎回ゼロから手探りになり、納期にも品質にも波が出ます。
JBG音楽院では、DTAM(Desktop and Analog Musicの略)という考え方で、DAW操作だけでなく体系的な音楽理論やアナログ楽器の録音技術までを土台から鍛えます。クライアントのどんなオーダーにも論理で対応できる力を、基礎から応用へ段階的に身につける設計です。一定のレベルに達した受講生には、ゲーム会社やCM制作会社などからの有償案件を直接仲介するキャリア支援も行っています。学びながら、実際の案件で実績を作っていけるということです。
副業の幅を広げたい方は、CM音楽で収益化を目指す職人の稼ぎ方や、劇伴作曲家の仕事と必要スキルもあわせて読むと、進みたい方向が具体的に見えてきます。
まとめ
- 作曲の副業は「自分が作りたい曲」から「誰かの用途に役立つ曲」へ視点を移すところから始まる。
- 始め方はストック・クラウドソーシング・直接依頼の3つ。初心者はストックや受注で実績を積みやすい。
- サブスクは1再生0.2円前後、コンペ採用率は1〜5%。最初の1円まで数ヶ月かかるのが現実で、複数の入り口を持つほど続けやすい。
- 単価を上げる鍵は、リピートと紹介を生む信頼、応用力とミックス技術、そして社会人としてのビジネス力。
本気で副業を軌道に乗せたいなら、まず学習全体の地図を一度押さえておくと近道です。『社会人のDTM 始め方ロードマップ』(51ページPDF)では、上達の順序やプロを目指す道筋まで整理しています。
よくある質問
作曲の副業は実際いくらくらい稼げますか?
始め方によって幅があります。ストック販売は月数千円から、配信は1再生0.2円前後、コンペは採用されれば1曲数十万円規模です。最初の1円まで数ヶ月かかることが多く、複数の入り口を組み合わせて積み上げるのが現実的です。
初心者はどの始め方から手をつけるのがいいですか?
納期のプレッシャーが少ないストックミュージック型か、要望をすり合わせながら学べるクラウドソーシング型がおすすめです。どちらも実績が形に残り、次の依頼につながりやすいためです。
音楽理論やミックスはどのくらい必要ですか?
趣味の範囲では感覚でも作れますが、単価を上げて指名される段階では、狙った印象を理論で再現する力と、クリアな音源を納品するミックス技術が求められます。要望に安定して応えるための土台になります。
副業の収入でも確定申告は必要ですか?
給与以外の所得が年間20万円を超える場合は、原則として確定申告が必要です。売上だけでなく機材費やソフト代などの経費も記録しておくと、申告のときに役立ちます。