
【コード聴き取り編】楽曲分析力とアレンジセンスを格段に向上させるコードプログレッション聴音術
「好きな曲のメロディは耳コピできるけど、コード進行が全く分からない…」「コードを聴き取ろうとしても、音が団子になって聴こえて、何の和音かさっぱり…」「コードが分からないから、楽曲分析やアレンジも先に進めない」そんな壁にぶつかっていませんか?メロディを彩り、楽曲全体の雰囲気や感情を支配している「コード進行」。これを耳で正確に聴き取る能力は、作曲家やアレンジャーにとって不可欠なスキルです。楽曲の骨格であり、雰囲気を決定づけるコード進行を正確に聴き取る能力は、深い楽曲分析や高度なアレンジを行う上での第一歩です。この記事では、様々な種類のコード(トライアド、セブンスコード、テンションコード等)や、ポップスやジャズで頻出する代表的なコード進行パターンを、耳だけで聴き分けるための効果的なトレーニング方法とコツを紹介します。JBG音楽院が重視するハーモニー感覚の磨き方も、ぜひ参考にしてください。
なぜコードの聴き取りが作曲とアレンジの鍵を握るのか?
メロディが楽曲の「顔」だとすれば、コード進行は楽曲の「骨格」であり「心」です。コード一つで曲の雰囲気は明るくも暗くもなり、コード進行一つで物語の展開や感情の起伏が生まれます。このハーモニーを聴き取る力が、なぜ作曲やアレンジにおいてそれほど重要なのでしょうか?
- 正確な楽曲分析の基礎となる: プロの楽曲から作曲テクニックを学ぶ「楽曲分析」において、コード進行を正確に把握することは全ての分析の出発点です。コードが分からなければ、メロディとの関係性やアレンジの意図を深く理解することはできません。
- アレンジの選択肢が飛躍的に広がる: 既存の曲をアレンジ(編曲)する際、元のコード進行を理解していなければ、効果的な対旋律を考えたり、楽器を重ねたりすることは困難です。コードを聴き取る力は、あなたのアレンジセンスを直接的に向上させます。
- 耳コピの精度とスピードが向上する: コード進行を分析しながらの耳コピは、多くのミュージシャンが行う重要なトレーニングです。コード進行をパターンとして聴き取れるようになると、耳コピ全体の精度とスピードが格段に上がります。
- 作曲時のハーモニー感覚が豊かになる: 多くのコード進行のパターンを耳で覚えることで、自分自身が作曲する際のハーモニーの引き出しが増え、より魅力的で独創的なコード進行を生み出すことができるようになります。
このように、コードを聴き取る能力、すなわち「ハーモニー聴音」の力は、音楽をより深く理解し、創造するための鍵となります。これは、当音楽院のブログ記事である「「良い耳」が作曲の質を変える!プロに必要な聴音能力と効果的な耳トレ方法」でも解説している「良い耳」を構成する中心的な要素です。

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コード聴音の第一歩:和音の種類を聴き分ける基礎トレーニング
コード進行を聴き取るためには、まず単体の和音(コード)がどのような響きを持つのか、その種類を聴き分けられるようになる必要があります。ここでは、基本的な和音の種類の聴き分けについて、そのサウンドキャラクターと共に解説します。
明るい vs 暗い:「長三和音(メジャー)」と「短三和音(マイナー)」
和音の聴き分けにおいて最も基本となるのが、メジャーコードとマイナーコードの違いです。ピアノやギターで「ドミソ(C)」と「ド・ミ♭・ソ(Cm)」を弾き比べてみてください。メジャーコードは明るく、楽しく、ポジティブな響き、マイナーコードは暗く、切なく、悲しげな響きがするのが分かるはずです。この基本的な「明暗」の感覚を身につけることが、全ての始まりです。
不安定な響き:「減三和音(ディミニッシュ)」と「増三和音(オーギュメント)」
次に、少し不安定で独特な響きを持つコードです。ディミニッシュコード(例:シレファ)は、暗く、ミステリアスで、強い緊張感を持っています。一方、オーギュメントコード(例:ドミソ#)は、どこか不思議で、夢の中にいるようなフワフワとした浮遊感のある響きが特徴です。これらは楽曲の中でスパイスとして効果的に使われます。
響きに彩りを加える「四和音(セブンスコード)」
三和音にさらに音を加えた四和音(セブンスコード)は、楽曲により豊かな彩りと深みを与えます。特に以下の4つは頻出します。
- メジャーセブンス (M7): 明るく、おしゃれで、都会的な響き。
- マイナーセブンス (m7): 少し気だるく、切なさの中に落ち着きがある響き。
- ドミナントセブンス (7): 不安定で緊張感があり、次のコードに進みたがる力が強い、ブルージーな響き。
- マイナーセブンスフラットファイブ (m7♭5): 暗く、不安げで、ミステリアスな響き。
これらの響きの違いを体感的に覚えることが、ハーモニー聴音の精度を高めます。
【実践ドリル】コード進行を分析する耳コピ能力を鍛える練習法
単体の和音の聴き分けができるようになったら、次はいよいよコードの連なり、つまり「コード進行」を聴き取るための実践的な練習に入ります。
ドリル1:ベース音の動きを追う
コード進行を聴き取る上で、最も重要なヒントとなるのが「ベース音」の動きです。多くの場合、ベース音はそのコードのルート音(根音)を演奏しています。まずは楽曲のベースラインだけを集中して聴き取り、その音の動きを追いかけてみましょう。ベースの動きが分かれば、コード進行の骨格が見えてきます。DAWのイコライザーで低音域をブーストしたり、他の帯域をカットしたりすると、ベース音が聴き取りやすくなります。
ドリル2:トップノート(最高音)の動きを追う
ベース音と同時に、和音の一番高い音(トップノート)の動きを追うことも有効です。トップノートはメロディとは別の、もう一つの旋律(対旋律)を形成していることが多く、コード進行に滑らかな繋がりを与えています。ベース音の動きとトップノートの動きを把握することで、その間のハーモニーを推測しやすくなります。
ドリル3:カデンツ(終止形)を覚える
音楽には、頻繁に使われる「定型句」のようなコード進行のパターン(カデンツ)が存在します。例えば、「IV→V→I」(サブドミナント→ドミナント→トニック)という進行は、J-POPのサビなどで非常に多く使われる強力なパターンです。このような頻出パターンをいくつか覚えておくと、「あ、この感じはあの進行だな」と、耳だけでコード進行を予測できるようになります。
ドリル4:楽器を使って「答え合わせ」をする
耳で聴き取ったコード進行が本当に合っているか、必ずピアノやギターなどの楽器で弾いて「答え合わせ」をする習慣をつけましょう。実際に弾いてみることで、自分の聴き取りが正しかったかを確認できるだけでなく、なぜその響きが生まれるのかを身体で理解することができます。
ポップス頻出!覚えるべき代表的なコード進行パターン
理論的な学習と並行して、J-POPや洋楽で頻繁に使われる代表的なコード進行を、具体的な曲例と共に覚えてしまうのも非常に効果的な練習法です。ここではいくつか有名な進行をご紹介します。
- カノン進行 (C-G-Am-Em-F-C-F-G): パッヘルベルの「カノン」に由来する、非常に有名で感動的な進行。多くのヒット曲で使われています。
- 王道進行 (F-G-Em-Am): J-POPのサビで特に多用される、明るくキャッチーで高揚感のある進行です。
- 小室進行 (Am-F-G-C): 90年代に大ヒットを連発した、少し切なさを含んだ疾走感のある進行です。
- 丸の内進行 (Fmaj7-E7-Am7-Gm7-C7): ジャズの要素を取り入れた、おしゃれで都会的な雰囲気を持つ進行です。
これらの進行を実際に楽器で弾いてみて、その響きを耳に焼き付けましょう。
ハーモニー聴音と音楽理論の連携で、さらに上のレベルへ
コード聴き取りの能力は、音楽理論、特にコード理論の知識と連携させることで、さらに高いレベルへと到達できます。音楽理論を学ぶと、「このキーでは、これらのコードが使われやすい」「このコードの後には、このコードが来やすい」といった、コード進行の文法(ルール)を理解できるようになります。これにより、耳で聴き取った音に理論的な裏付けを与え、より確信を持ってコードを特定できるようになるのです。
例えば、テンションノートを含む複雑なコードも、その構成や機能に関する理論的知識があれば、ただの音の塊ではなく、意味のある響きとして聴き取ることができます。コード聴音のスキルと理論的知識は、互いを高め合う車の両輪のような関係なのです。応用的なコード理論については、当音楽院のブログ記事である「【コード理論編】プロが実践で使うテンションコードとリハーモナイゼーション基礎テクニック」でも詳しく解説しています。

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JBG音楽院で磨く、実践的なハーモニー聴取能力
JBG音楽院では、このようなコード聴き取り能力、すなわちハーモニー聴音のスキルを、楽曲分析力やアレンジセンスに直結する重要な能力として位置づけています。私たちのイヤートレーニングのカリキュラムでは、単体の和音の聴き分けから始まり、様々なコード進行パターンの聴取、さらには複雑な楽曲のハーモニー分析に至るまで、段階的にスキルアップできるプログラムを提供しています。
講師が提示する課題に対して、受講生が実際にコード進行を聴き取り、その答えに対して講師がフィードバックを行う。この反転学習サイクルを通じて、独学では難しい「答え合わせ」と「弱点補強」を効率的に行うことができます。
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まとめ:コードを聴き取る力で、音楽の世界をより深く楽しもう
楽曲分析力とアレンジセンスを格段に向上させるための、コードプログレッション聴音術について解説してきました。楽曲の骨格であるコード進行を正確に聴き取る能力は、あなたが音楽をより深く理解し、そして自由に創造するための第一歩です。最初は難しく感じるかもしれませんが、ベース音を追うこと、代表的な進行パターンを覚えること、そして楽器で答え合わせをすること、といったPunjab的な練習を重ねることで、あなたの耳は着実に成長していきます。
JBG音楽院のメソッドも参考に、ハーモニー感覚を磨けば、これまで何気なく聴いていた好きな曲が、作曲家の意図や工夫に満ちた「学びの宝庫」に見えてくるはずです。ぜひ、この記事で紹介したトレーニングを実践し、コードを聴き取る楽しさと、それによって広がる新しい音楽の世界を体感してください。
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